5/5 ドリームコンサート イベントレポート

会場を埋め尽くした音楽ファンは、初めて耳にするその響きに魅了されています。誰もが「おもちゃ?」と思っていた小さな楽器が、意外に本格的な響きを持っていることに驚いていたのです。

J.スティーヴンソン作曲の《天使の賛美歌》から本編がスタート。

そしてJ.スティーヴンソン作曲の《天使の賛美歌》から本編がスタート。

左から、新日本フィルハーモニー交響楽団首席トランペット奏者・伊藤駿、新日本フィルハーモニー首席トランペット奏者・服部孝也、トランペット奏者・守岡未央(第84回日本音楽コンクール第一位)、読売日本交響楽団トランペット奏者・尹千浩の各氏。

服部さん(右)は前半の二曲で解説を担当。担当するのは高音楽器ですが、よく響く渋い低音のヴォイスが素晴らしい。

バッハ《ブランデンブルク協奏曲第三番》を全員で。

原曲は弦楽器だけですが、それを金管楽器だけで演奏すると趣がまったく変わります。原曲に隠されていたダイナミズムを肌で感じられる名編曲に拍手。原曲では通奏低音(チェンバロ等)の即興とされている第二楽章は、トランペットのレシタティーヴォで美しく聴かせました。

コンテストなどで定番のオストランスキーの六重奏曲は、意外にもプロの演奏が少ないらしいとのこと。おそらくこの曲を練習しているのでしょうか、会場からは食い入るような視線がステージに集中していました。

ユーフォニアムの安東さんがトロンボーンに持ち替えて《フレンド・ライク・ミー》を。

ホルン、ユーフォニアム、チューバの三重奏での《ハンガリー舞曲第五番(ブラームス)》は、ブラームス特有の泣き節を円錐管楽器軍団が切々と演奏。

素晴らしいアレンジをしたのは、やはり山口さん。口も八丁、手も八丁、というわけです。

《ピザ・パーティ》の原曲は金管八重奏なのですが、この日は山口さんのアイディアで7人での演奏になりました。これでも充分楽しめたけれど、楽曲に対して独自の物語(妄想?)をつける山口さんの奔放な想像力にも感動。

演奏前に、あたかも本当のようにこの楽曲の裏にある「物語」を語ってくれたのです。
単にピザをたべている楽しい様子を描いた曲かと思いきや、実はその裏に作者自身の悲しい人生の物語があった…という山口さんのお話、途中まで本気で信じてた人も多いことでしょうね。

最後は、その山口さん自身のアレンジによる《ながさき音楽探訪》。長崎ゆかりの楽曲や佐世保の市歌が満載、しかも《長崎は今日も雨だった》では自ら「演歌トロンボーン奏者」と名乗る山口さんが大ソロを演奏して拍手喝采を浴びていました。

しかし、実は山口さんを含めメンバーには長崎関係者は皆無。会場にはいないかなー、と思って探してみたら…

ひとりいらっしゃいました。写真のN.Kさんは「久しぶりに長崎にまつわる曲が聴けて懐かしかった!」と、立派なOKサインをくださいました。


ドリームコンサートのオオトリは 「トルヴェール・クヮルテット」!

昨年惜しくも夭折された新井靖志さんの代奏神保佳祐(じんぼ・けいすけ)さんを交えて、定番《 「ブエノスアイレスの四季」より「春」(ピアソラ/啼鵬》からスタート。

「いつも通り、心をこめて演奏しました」と語ってくれた須川さん。
しかしこの日の演奏は、これまで以上の熱のこもった演奏に思えました。《3つの小品(スカルラッティ)》《サクソフォーン四重奏によるコンセール(リュエフ)》など、いずれも素晴らしい演奏でした。

毎年ドリームコンサートのステージで見ていた新井さんが今年いないことに悲しい思いを抱かなかったひとはいないでしょうけど、おそらく一番重責を感じていたのは新井さんの愛弟子のひとりだった神保さん自身ではないでしょうか。

師匠の音楽的遺伝子を確かに感じする確実な表現力に加え、独自のさわやかな音色が吟遊詩人(トルヴェール)に新たな響きをもたらしたように感じました。

アイディアに溢れた長生淳編曲の《カルメン・ラプソディ》では、須川さん&神保さんのデュオシーンも。

アルトの彦坂眞一郎さんも、元気一杯に「オーソレミオ!」を決めます。
そう、なぜかこの曲は進んで行くうちに歌劇「カルメン」から脱線しちゃうんですが、そこがまた面白いところ。ソプラノの須川展也さんは大笑い。
バリトンの田中靖人さんも吹き出したいのをこらえて演奏していますね。

昨日に引き続き、この日もラブジャミの宇佐美凜さんが来場されていたのです。

全日参加であればスタッフ同然!スタッフジャンバーを着ていただいての写真になりました。すっかりドリームコンサートと下倉楽器のファンになった宇佐美さん。

来年も楽しい企画でお会い出来たらいいですね!

Dream Brass

Dream Brass

プロフィール

服部 孝也 Takaya HATTORI 〔Trumpet〕

1970年愛知県名古屋市出身 1993年愛知県立芸術大学音楽学部卒業、桑原賞受賞、読売新人音楽賞受賞 同年 新日本フィルハーモニー交響楽団に入団する。 1999年アフィニス文化財団海外研修生として、ニューヨークのマネス音楽大学 で学ぶ。 パシフィック・ミュージック・フェスティバル、アスペン・ミュージックフェスティバルにも参加。またサイトウキネンオーケストラにも度々出演し、アメリカ、ヨーロッパツアーに参加する。またソリストとしても、ロストロポーヴィチ指揮ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第一番、G.ボッセ指揮ハイドンのトランペット協奏曲などを新日本フィルと、母校愛知県立芸術大学ウインドオーケストラとアルチュニアンのトランペット協奏曲を共演している。また2007年東京オペラシティリサイタルシリーズ B→Cに出演。自身初のリサイタルを行う。トランペットを竹本義明、津堅直弘、クリス・ゲッカー、ヴィンセント・ペンザレラの各氏に師事。現在 新日本フィルハーモニー交響楽団首席奏者、愛知県立芸術大学非常勤講師、なぎさブラスゾリステン、トウキョウブラスシンフォニーのメンバー

伊藤 駿 Shun ITOU 〔Trumpet〕

1991年大阪府生まれ。
岡山県私立明誠学院高等学校特別芸術コースを経て、京都市立芸術大学音楽学部卒業。 第30回ヤマハ管楽器新人演奏会出演。
第6回関西トランペット協会コンクール第1位。

これまでにトランペットを宮村聡、早坂宏明、杉木峯夫、白水大介の各氏に師事。 室内楽を呉信一、若林義人の各氏に師事。

現在、新日本フィルハーモニー交響楽団契約団員。


(C)読売日本交響楽団

尹 千浩 Cheonho YOON 〔Trumpet〕

神奈川県、横浜市に生まれ、愛知県立芸術大学音楽学 部卒業。在学中、アジアユースオーケストラ、小澤征爾音楽塾、PMFに参加。卒業時、ヤマハ 新人演奏会に出演、おきでんシュガーホール新人演奏会において優秀賞受賞。 卒業後渡米し、クリーヴランド音楽院、コルバーン音楽院修了。在学中、ウエストヴァージニア交響楽団の二番/副首席トランペット奏者となり、2012/13シーズンからはバークレー交響楽団の首席奏者としても活動する。アメリカ以外にもヘルシンキフィル、マレーシアフィルなどのオーケストラに客演する。2014年に日本に帰国し、読売日本交響楽団トランペット奏者。

守岡 未央 Mio MORIOKA 〔Trumpet〕

埼玉県出身
2011年武蔵野音楽大学卒業、同大学卒業演奏会に選抜される。
第7回日本ジュニア管打楽器コンクール高校生トランペット部門銅賞、第4回音大生のための津堅コンクール入選、第81回読売新人演奏会、第27回ヤマハ管楽器新人演奏会、武蔵野音楽大学新人演奏会に出演、第81回日本音楽コンクール入選、第12回東京音楽コンクール金管部門第3位及び聴衆賞(第1位なし)、第84回日本音楽コンクール第1位及び岩谷賞(聴衆賞)、E.ナカミチ賞。
現在洗足学園ニューフィルハーモニック管弦楽団団員。これまでにトランペットを佛坂咲千生氏、室内楽を戸部豊氏に師事。

松坂 隼 Syun MATSUZAKA 〔Horn〕

福島市生まれ。9歳よりホルンをはじめる。 東京藝大附属高校を卒業後、ドイツ・ミュンヘンへ留学。2年程学び帰国。 東京藝術大学に入学し、在学中に読売日本交響楽団に入団。2016年より首席奏者を務める。2013年には読響・東京芸術劇場名曲シリーズにおいて協奏交響曲(モーツァルト)のソリストを務めた。またAmuseQuintet(木管五重奏)をはじめとした室内楽等の活動も精力的に行っている。
第74回日本音楽コンクール、第23回日本管打楽器コンクールにおいて第3位入賞。 ホルンを阿部雅人、守山光三、W.ガーク、M.ノイキルヒナーの各氏に師事。

山口尚人 Hisato YAMAGUCHI 〔Trombone〕

佐賀県出身、東京芸術大学卒業。
東京シティフィルハーモニック管弦楽団を経て、現在新日本フィルハーモニー交響楽団副首席トロンボーン奏者。
またズーラシアンブラスのメンバーとしても活動している。
作編曲家としてはズーラシアンブラスのほか、新日本フィル・名古屋フィル・東京佼成ウインドオーケストラなどにも提供している。

中西 和泉 〔Trombone〕

神奈川県出身。2000年東京芸術大学卒業。

1997年度東京文化会館新進音楽家デビューコンサート出演。

トロンボーンを栗田雅勝氏に師事。

現在東京フィルハーモニー交響楽団首席トロンボーン奏者、聖徳大学音楽学部兼任講師。

野々下 興一 Koichi NONOSHITA 〔Trombone〕

1975年東京都生まれ。
洗足学園大学卒業。
大学在学中よりフリーランスのバストロンボーン奏者としての活動を開始し、
日本各地のオーケストラ、室内楽やスタジオレコーディング等での演奏活動を行う。
第一回大阪トロンボーンコンペティション アンサンブル部門最高位入賞。
バストロンボーンを秋山鴻市に師事。
東京都交響楽団バストロンボーン奏者。
昭和音楽大学、洗足学園音楽大学各講師。
東京メトロポリタントロンボーンカルテット、侍ブラス、TrioDiesel各メンバー。

安東 京平 Kyouhei ANDO 〔Euphonium〕

1986年北海道芦別市出身。国立音楽大学を矢田部賞を受賞し卒業。ロームミュージックファンデーション奨学生として、アメリカアラバマ大学に留学、2012年12月同大学大学院 修士課程修了。これまでに三浦徹、竹内広三、Dr.齋藤充、Dr.Demondrae Thurman、ヒロ野口の各氏に師事。第24回日本管打楽器コンクールユーフォニアム部門第1位、第25回ファルコーニ国際ユーフォニアム・チューバ・コンペティション第1位、SERTECユーフォニアムソロコンペティション及びユーフォニアム・テューバ四重奏コンペティション第1位、第2回リエクサブラスウィーク・国際ユーフォニアムコンペティション第3位。ユーフォニアム・テューバ四重奏“Boreas Quartet”、“Euphonium Tuba Collective”のメンバー。シュピール室内合奏団、Blitz Philharmonic windsユーフォニアム奏者。国立音楽大学ユーフォニアム非常勤講師、聖徳大学付属取手聖徳女子中学校・高校兼任講師、東北学院大学シンフォニックウィンドアンサンブルバンドトレーナー。また、プロの吹奏楽やオーケストラのエキストラ、各地でのユーフォニアム指導などで活動している。

柳生 和大 Kazuhiro YAGYU 〔Tuba〕

県立秋田高等学校を経て
2007年秋田大学教育文化学部卒業
2009年東京芸術大学大学院音楽研究科修了。
2007年 第24回日本管打楽器コンクールテューバ部門第二位。
2009年 第21回大曲新人音楽祭グランプリ。
2010年 済州国際ブラスコンペティション(韓国)チューバ部門第三位。
2010年 第27回日本管打楽器コンクールテューバ部門第一位及び審査員特別 賞受賞。
これまでにチューバを池田孝幸、杉山淳、稲川榮一の各氏に、室内楽を神谷敏、板倉駿夫氏の各氏に師事。2009年2月日本フィルハーモニー交響楽団入団。現在日本フィルハーモニー交響楽団テューバ奏者、ズーラシアンブラスメンバー、アンサンブルZEROメンバー、洗足学園音楽大学、上野学園大学非常勤各講師


Dream Brass 昨年の金管演奏ハイライトMOVIE



トルヴェール・クヮルテット Trouvère Quartet

トルヴェール・クヮルテット

1987年に結成、2017年には結成30周年を迎えた、世界トップレベルのサクソフォン四重奏団。92年東京国際音楽コンクール第2位、第5回日本吹奏楽アカデミー賞「演奏部門」受賞。98年にはTV朝日「徹子の部屋」への出演を機にその存在を広く一般にも知られるようになる。2000年にはオランダでの日蘭国交修好400年記念演奏会に招かれ各地で絶賛を浴びた。
2001年発売のCD「マルセル・ミュールに捧ぐ」は、第56回文化庁芸術祭レコード部門で大賞という快挙を遂げた。EMI他から多数CDがリリースされている。最新CDは2017年発売の「Tipsy Tune」(イマジン・ベストコレクション)。
「個性と融合」をコンセプトに、コンサートではサクソフォンのためのクラシカルな作品から、トルヴェールならではのオリジナル編曲作品までを展開。ボーダレスな活動内容が幅広い層に圧倒的な支持を得続けている。また、その音楽性と驚異的なテクニックによる緊密なアンサンブルが、世界最高峰のサクソフォン・クヮルテットとしての評価を揺るぎないものとしている。

結成時よりテナーを務めた新井靖志が昨年9月に永眠いたしました。本公演は代わって神保佳祐が出演いたします。

プロフィール

須川展也 Nobuya SUGAWA 〔Soprano Sax〕

東京藝術大学卒業。第51回日本音楽コンクール、第1回日本管打楽器コンクール最高位受賞。02年NHK連続テレビ小説『さくら』テーマ演奏。名だたる作曲家への委嘱曲がSaxの新たな主要レパートリーとして国際的に広まっている。89-2010年まで東京佼成ウインドオーケストラのコンマスを務めた。最新CDCDは2016年発売の「Masterpieces」。ヤマハ吹奏楽団常任指揮者、静岡市清水文化会館音楽アドヴァイザー&マリナート・ウインズ音楽監督。東京藝大招聘教授、京都市立芸術大学客員教授。使用楽器:ヤマハYAMAHA YSS-875EXG

彦坂眞一郎 Shin-ichiro HIKOSAKA 〔Alto Sax〕

東京藝術大学大学院修了。安宅賞受賞。CBSソニー「ザ・ニューアーティスト・オーディション '88」においてFM東京賞、クリスティン・リード賞受賞。99年東京オペラシティリサイタルシリーズ「B→C」出演。上野学園大学教授。本多俊之主催の室内楽ユニット「SMILE!」に参加。最近のCDは、08年発売の新井靖志とのデュオによる「6つのカプリス~2本のサクソフォンのための作品集~」(マイスター)、09年発売のソロCD「明日の方へ」(フロレスタン)。使用楽器:セルマーシリーズⅡGP


(C)東京芸術劇場

神保佳祐 Keisuke Jimbo 〔Tenor Saxophone〕

群馬県出身。昭和音楽大学卒業、同大学音楽専攻科修了。卒業時に同大学の卒業演奏会に出演。JTアートホール主催公演や富士山河口湖音楽祭等に出演。アウトリーチ活動も積極的に行っている。ソロ、アンサンブルをはじめ、在京オーケストラ・吹奏楽団のエキストラとして様々な公演や録音に参加。東京芸術劇場による芸劇ウインド・オーケストラ・アカデミーに第一期生として在籍中。サクソフォンを大津立史、新井靖志、有村純親に師事。使用楽器:セルマーシリーズⅢGP

※トルヴェール・クヮルテット結成時よりテナーSaxを務めていたメンバーの新井靖志が、2016年9/9、脳出血のため永眠いたしました(享年51歳)。代わりまして、本公演は神保圭祐が出演させていただきます。

田中靖人 Yasuto TANAKA 〔Baritone Sax〕

国立音楽大学卒業、矢田部賞受賞。在学中に第1回日本管打楽器コンクール2位、第4回同コンクール1位受賞。CDは「管楽器ソロ名曲集」(日本コロムビア)の他、「ラプソディ」、「サクソフォビア」(東芝EMI)、「ガーシュイン・カクテル」(佼成出版社)、「モリコーネ・パラダイス」(EMI)をリリース。03年和歌山県より「きのくに芸術新人賞」受賞。現在、愛知県立芸大講師、昭和音楽大講師、札幌大谷大学客員教授、東京佼成ウインドオーケストラのコンサートマスター。使用楽器:ヤマハYAMAHA YBS-62Ⅱ

小柳美奈子 Minako Koyanagi 〔Piano〕

東京藝術大学卒業。伴奏のイメージを変えてしまうアンサンブル・ピアニスト。様々なプレイヤーの呼吸の機微を読み取り、それに寄り添うしなやかな感性を数多くの公演、録音で発揮している。吉松隆「サイバーバード協奏曲」の準ソリストとしてフィルハーモニア管他多くの楽団と共演。須川展也、トルヴェールQの共演者としてのキャリアも長く、多くの録音に参加。パーカッションの山口多嘉子とのデュオ「パ・ドゥ・シャ」でCDを発表。トリオ「YaS-375」メンバー。

トルヴェール・クヮルテット 昨年の演奏ハイライトMOVIE





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