5/4 ドリームコンサート

会場を前日より倍ほどのキャパシティがある「アカデミーホール」に移しての第2日目は、
とにかく楽しさ優先の1日目とは少し趣を変えて、

クラシカルな金管合奏と伝統的なディキシーランド・ジャズの2本立て。

さらに開演前のオープニング・コンサートとして「ちっちゃいホルン・アンサンブル」、
略して「CHE」のステージも用意されて、ボリュームの豊かさは前日に引けを取りません。

ロビーでの楽器展示会も大盛り上がり!光り輝く楽器に、中高生の演奏家たちも大興奮。

展示会では、下倉オリジナル管楽器”MARCATO”・YAMAHA・BACH・CRAMPONの最新モデルから定番モデルまで網羅。
この日にしか手に入らない、”特別ステッカー”の配布もあり、実に楽しそうでした。

プレコンサート CHE ちっちゃい・ホルン・アンサンブル

まずはオープニング・コンサート。
客席が埋まりつつある中で「CHE」の6名(ポケットホルン×5、トラベルテューバ×1)の登場です。

演奏されたのはホルン奏者御用達の「緑本」こと『ヴァルトホルン・クァルテット集』から、《狩りから、家路へ》《もみの木》《菩提樹》《陽気な山番》の4曲。

いずれも「ちっちゃいホルン」ならではの可愛らしい(でも本格的!)サウンドにほのぼのとさせられます。

MCでは「通勤に便利」「ホルン・アンサンブルの飛び道具になる」「アンサンブルに簡単に加われる」と、「小さい楽器」のメリットを力説。

トラベルテューバも「テューバが重すぎる人」「テューバ奏者がいないとき、ホルン奏者でも吹ける」「名前の通り、旅行にも持っていける」等、軽く突っ込みどころを残して会場を暖めてくれました。


CHE ちっちゃい・ホルン・アンサンブル 演奏ハイライトMOVIE


Dream Brass

Dream Brassはこのコンサートだけのために臨時で結成された、まさに金管のドリーム・チーム。

NHK交響楽団を始め、日本のトップ・オーケストラの名プレーヤーがずらりと顔を揃えます。

通常は別々のオーケストラに所属しているわけですから「合わせ」の機会は必要最小限、のはずなのにそんなことは露ほども感じさせない練達のアンサンブルは「さすが!」という他ありません。

ステージは第1部から第3部まで、それぞれ趣向を変えて聴き手をできる限り飽きさせないように練り上げられていました。

第一部は10人全員が乗り、まずW.バードの《オックスフォード伯爵の行進曲》C.ジェルヴェーズ、P.アテーニャンの《古いフランス舞曲集》からアルマンド・ガリャルド・パヴァーヌ・バスダンスの4曲を。


金管アンサンブルのコンテストでよく取り上げられるものの、きちんと吹こうとすると意外と難しいのがこういった静かな曲。

それを超一流がやるとこうなるのだ、という模範的な演奏でした。
またホルンの木川博史さんが兼任で叩く打楽器が、ルネサンス期の雅びな雰囲気を盛り立てます。

編成が次々に変わる第二部では、

兼田敏の《エピソード》(金管六重奏)、

モーツァルトの《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》(ホルン、ユーフォニアム、テューバ)、

ジャズのスタンダード曲、《ザッツ・ア・プレンティ》(トランペット×4)

そして《川の流れのように》(トロンボーン×4)

というジャンルもスタイルも異なる楽曲を次々に披露。

どの曲でも音色やテクニックが極上なのはもちろん、ソロを回すような場面でも何しろスムーズで、中高生たちに「アンサンブルは楽しいね!みんなもいろんな楽曲にチャレンジしよう!」と身をもって教えているかのようでした。

第三部に入って様相は一変。

「演歌メドレー」の編曲を担当した、トロンボーン山口尚人さんの軽妙な曲紹介から客席は徐々にリラックスムードとなり、

《津軽海峡冬景色》が始まると、もうどこか歌謡ショーを見ているような、懐かしい馴染みの良さが会場を包みます。

《兄弟船》(《与作》から急遽変更)、《浪花節だよ人生は》と進むうちに独特のグルーヴ感がどんどん加わり、とどめを刺す感じでコブシをきかせたソロが炸裂、拍手の質がこれまでと明らかに違います。

さらにケレン味たっぷりの《キューティーハニー》で会場の盛り上がりは最高潮に。

金管10重奏の定番、《クラーケン もう一匹の猫》でアンコールに応えるまで、まさに怒涛の展開でした。


Dream Brass 演奏ハイライトMOVIE



Dream Brass Ensamble

プロフィール

服部 孝也 Takaya HATTORI 〔Trumpet〕

1970年愛知県名古屋市出身 1993年愛知県立芸術大学音楽学部卒業、桑原賞受賞、読売新人音楽賞受賞 同年 新日本フィルハーモニー交響楽団に入団する。 1999年アフィニス文化財団海外研修生として、ニューヨークのマネス音楽大学 で学ぶ。 パシフィック・ミュージック・フェスティバル、アスペン・ミュージックフェ スティバルにも参加。またサイトウキネンオーケストラにも度々出演し、アメ リカ、ヨーロッパツアーに参加する。 またソリストとしても、ロストロポーヴィチ指揮ショスタコーヴィチのピアノ 協奏曲第一番、G.ボッセ指揮ハイドンのトランペット協奏曲などを新日本フィ ルと、母校愛知県立芸術大学ウインドオーケストラとアルチュニアンのトラン ペット協奏曲を共演している。 また2007年東京オペラシティリサイタルシリーズ B→Cに出演。自身初のリサ イタルを行う。 トランペットを竹本義明、津堅直弘、クリス・ゲッカー、ヴィンセント・ペン ザレラの各氏に師事。 現在 新日本フィルハーモニー交響楽団首席奏者、愛知県立芸術大学非常勤講 師、なぎさブラスゾリステン、トウキョウブラスシンフォニーのメンバー

長谷川 智之 Tomoyuki HASEGAWA 〔Trumpet〕

1980年北海道函館市生まれ。
東京藝術大学音楽学部卒業。第22回日本管打楽器コンクール第2位、第75回日本音楽コンクール第1位および岩谷賞(聴衆賞)受賞。NHK-FM名曲リサイタルに出演。これまでにトランペットを杉木峯夫、松田次史、関山幸弘の各氏に師事。
東京フィルハーモニー交響楽団首席奏者を経て、2016年2月よりNHK交響楽団契約団員。洗足学園音楽大学非常勤講師。


(C)読売日本交響楽団

尹 千浩 Cheonho YOON 〔Trumpet〕

神奈川県、横浜市に生まれ、愛知県立芸術大学音楽学 部卒業。在学中、アジアユースオーケストラ、小澤征爾音楽塾、PMFに参加。卒業時、ヤマハ 新人演奏会に出演、おきでんシュガーホール新人演奏会において優秀賞受賞。 卒業後渡米し、クリーヴランド音楽院、コルバーン音楽院修了。在学中、ウエストヴァージニア交響楽団の二番/副首席トランペット奏者となり、2012/13シーズンからはバークレー交響楽団の首席奏者としても活動する。アメリカ以外にもヘルシンキフィル、マレーシアフィルなどのオーケストラに客演する。2014年に日本に帰国し、読売日本交響楽団トランペット奏者。

守岡 未央 Mio MORIOKA 〔Trumpet〕

埼玉県出身
2011年武蔵野音楽大学卒業、同大学卒業演奏会に選抜される。
第7回日本ジュニア管打楽器コンクール高校生トランペット部門銅賞、第4回音大生のための津堅コンクール入選、第81回読売新人演奏会、第27回ヤマハ管楽器新人演奏会、武蔵野音楽大学新人演奏会に出演、第81回日本音楽コンクール入選、第12回東京音楽コンクール金管部門第3位及び聴衆賞(第1位なし)、第84回日本音楽コンクール第1位及び岩谷賞(聴衆賞)、E.ナカミチ賞。
現在洗足学園ニューフィルハーモニック管弦楽団団員。これまでにトランペットを佛坂咲千生氏、室内楽を戸部豊氏に師事。

木川 博史 Hiroshi KIGAWA 〔Horn〕

2003年第20回日本管打楽器コンクール ホルン部門1位及び大賞受賞。
2004年第39回マルクノイキルヒェン国際コンクールにおいてディプロマを受賞。
大学在学中よりソリストとして東京交響楽団、新日本フィルハーモニー管弦楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、日本センチュリー交響楽団等と共演する。これまでに、サイトウ・キネン・フェスティバル、小澤征爾音楽塾、PMF、草津国際音楽アカデミー&フェスティバル等に参加。
東京音楽大学付属高等学校、同大学を卒業。水野信行、冨成裕一、岡本充代の各氏に師事。卒業後、ベルリン芸術大学にてC.F.ダルマンに師事。
2013年大阪市より「咲くやこの花賞」を受賞。日本センチュリー交響楽団を経て、2015年9月よりNHK交響楽団団員。

山口尚人 Hisato YAMAGUCHI 〔Trombone〕

佐賀県出身、東京芸術大学卒業。
東京シティフィルハーモニック管弦楽団を経て、現在新日本フィルハーモニー交響楽団副首席トロンボーン奏者。
またズーラシアンブラスのメンバーとしても活動している。
作編曲家としてはズーラシアンブラスのほか、新日本フィル・名古屋フィル・東京佼成ウインドオーケストラなどにも提供している。

清澄 貴之 Takayuki KIYOZUMI 〔Trombone〕

東京芸術大学卒業。在学中、東京文化会館新進演奏家デビューコンサート、練馬文化センター新人演奏会、芸大モーニングコンサートに出演。NTTDoCoMo奨学金受賞。神奈川フィルハーモニー管弦楽団の特別契約団員を務め、2006年広島交響楽団に入団。その他、The Trombone Ensemble minors、Crazy classixの各メンバー。広島文化学園大学非常勤講師。今までに、栗田雅勝、神谷敏、村岡淳志の各氏に師事。

野々下 興一 Koichi NONOSHITA 〔Trombone〕

1975年東京都生まれ。
洗足学園大学卒業。
大学在学中よりフリーランスのバストロンボーン奏者としての活動を開始し、
日本各地のオーケストラ、室内楽やスタジオレコーディング等での演奏活動を行う。
第一回大阪トロンボーンコンペティション アンサンブル部門最高位入賞。
バストロンボーンを秋山鴻市に師事。
東京都交響楽団バストロンボーン奏者。
昭和音楽大学、洗足学園音楽大学各講師。
東京メトロポリタントロンボーンカルテット、侍ブラス、TrioDiesel各メンバー。

安東 京平 Kyouhei ANDO 〔Euphonium〕

1986年北海道芦別市出身。国立音楽大学を矢田部賞を受賞し卒業。ロームミュージックファンデーション奨学生として、アメリカアラバマ大学に留学、2012年12月同大学大学院 修士課程修了。これまでに三浦徹、竹内広三、Dr.齋藤充、Dr.Demondrae Thurman、ヒロ野口の各氏に師事。第24回日本管打楽器コンクールユーフォニアム部門第1位、第25回ファルコーニ国際ユーフォニアム・チューバ・コンペティション第1位、SERTECユーフォニアムソロコンペティション及びユーフォニアム・テューバ四重奏コンペティション第1位、第2回リエクサブラスウィーク・国際ユーフォニアムコンペティション第3位。ユーフォニアム・テューバ四重奏“Boreas Quartet”、“Euphonium Tuba Collective”のメンバー。シュピール室内合奏団、Blitz Philharmonic windsユーフォニアム奏者。国立音楽大学ユーフォニアム非常勤講師、聖徳大学付属取手聖徳女子中学校・高校兼任講師、東北学院大学シンフォニックウィンドアンサンブルバンドトレーナー。また、プロの吹奏楽やオーケストラのエキストラ、各地でのユーフォニアム指導などで活動している。

佐藤 和彦 Kazuhiko SATO 〔Tuba〕

神奈川県出身。
国立音楽大学卒業。
第5回フィリップ・ジョーンズ国際コンクール(仏)テューバ部門第3位受賞。
第43回マルクノイキルヒェン国際コンクール(独)テューバ部門第2位受賞。
2009年東京オペラシティリサイタルシリーズ「B→C」にてソロリサイタルを開催。
テューバを稲川榮一、柏田良典の両氏に師事。
現在、新日本フィルハーモニー交響楽団 首席テューバ奏者。
ジャパン・テューバ・ソロイスツ、ズーラシアンブラス、如月四重奏団、各メンバー。
国立音楽大学、くらしき作陽大学、作陽音楽短期大学、尚美ミュージックカレッジ専門学校コンセルヴァトアール ディプロマ科、平成音楽大学、各講師。
フォンテックよりソロアルバム「Eternal」(レコード芸術準特選盤)、B-Musicより「コップラッシュ60の練習曲」、「テューバ小品集」をリリース。
日本ユーフォニアム・テューバ協会常任理事。


薗田憲一とデキシーキングス

昨年に続いての「ドリーム・コンサート」出演となる日本のディキシーランド・ジャズバンドの草分け、「薗田憲一とデキシーキングス」は遊び心たっぷりのハッピーなバンド。

創立者である薗田憲一の名を残しながら、初代の大ベテラン4人(筒井政明=トランペット、白石幸司=クラリネット&サックス、永生元伸=バンジョー、楠堂浩己=ドラム)と二代目の二人(薗田勉慶=トロンボーン、河合勝幸=テューバ)というメンバー構成になっています。

「古き良きアメリカ」の香りも色濃いこのバンド形態で、まず最初に演奏されたのがアメリカの「公式行進曲」でもあるスーザの《星条旗よ永遠なれ》、とにかく楽しく、とにかく元気な「ディキシーランド・ジャズ」の始まりです。

MCは故・薗田憲一の長男でもある薗田勉慶さん。


軽いメンバー紹介を経て2曲め、トロンボーンの「投げ縄のような」スライド奏法を表現したという
《Lassus Trombone(笑うトロンボーン)》では自身が華麗でコミカルなソロを披露してくれました。

次いでアメリカ民謡《リパブリック賛歌》(まあるい緑の山手線~の替え歌で有名、という説明付き)を
「ディキシーっぽい」アレンジでさわりだけ演奏、トランペットとクラリネットがメロディーを吹き、トロンボーンとテューバがそれを支え、
バンジョーとドラムが彩るという基本的な構成をわかりやすく伝えてくれました。

それから「薗田憲一とデキシーキングス」がかつてオープニングテーマを公式に演奏した《魔法使いサリー》、これは1960年代のオリジナルを知る世代には感涙モノ。お約束である「サリーサリー、サリーちゃーん」の掛け声もしっかり入っていました。

《After You've Gone(君去りしのち)》はトランペットが主役。

創立時からのメンバーである筒井政明さんの顔を真っ赤にしての大熱演に、客席からも掛け声が。

楽しいフレーズからトリッキーなハイトーン・サウンド。
驚くほどのロングトーン。

鳥肌が立ってしまうとは、まさにこのこと。

そして後半は白熱のドラム・ソロも。

目にもとまらぬ速さのスティックさばき、大迫力の大音量は、ジャズというジャンルを超え、まるでハードロック/へヴィ・メタルのドラミングでした。


続く《St. James Infirmary(セント・ ジェームス病院)》トロンボーンのスライドだけを使って演奏するブルースの名曲。

グラスのコップを使う特殊な奏法も披露してくれましたが、

「このグラスは特別な物で、なかなか簡単には手に入らいない……いや、普通に100円ショップで買えるものです。(笑)」

だそうです。(笑)


続いてディキシーランド・ジャズ鉄板の名曲《タイガー・ラグ》、ここではテューバが文字通り大爆発!

お決まりの「Hold the Tigar」の咆哮からそれぞれのソロが見せ場を作り、
テューバでの「ありがとうございました」(と、聞こえました)で締めくくり。

さらに「牛」(テューバ)、「豚」と「象」(トロンボーン)、「馬」(トランペット)の鳴き声まで模写して、最後の曲《聖者の行進》へ。

メンバー全員が歌ってから客席に下りて本当に行進するサービスに拍手は鳴り止まず、アンコールは「デキシーキングスの得意分野」、日本の唱歌をアレンジした《月の砂漠》でたっぷりと余韻を残し、歴史あるグループの貫禄を見せつけてくれたのでした。

薗田憲一とデキシーキングス 演奏ハイライトMOVIE


薗田憲一とデキシーキングス

ジャズの中で最もハッピーで心温まるジャズと云われているデキシーランドジャズの大御所薗田憲一が1960年11月に「薗田憲一とデキシーキングス」を結成。世界の民謡から日本の童謡・唱歌、その他ジャズになる可能性のある曲は、見事にデキシーに消化し愛好者の期待に応える活動をしています。このグループの演奏は各レコード会社のLPで結成以来50数枚吹き込まれ好評を博しています。又、テレビ、ラジオでも意義ある出演、種々のコンサートやイベント等、多方面に亘っての活躍。

このグループの独壇場で、迫力ある、しかも、適度なユーモアを持った演奏と歌、そして、楽しいコーラスは、聞く人々を魅了せずにはおきません。
2006年7月12日、薗田憲一は惜しくも他界。亡き後、デキシーキングスサウンドを絶やさぬよう、「薗田憲一とデキシーキングス」の名を存続し、演奏活動を続け、好評を博している。

プロフィール

薗田勉慶 〔Trombone〕

2006年7月、父 薗田憲一亡き後、 正式にデキシーキングス入団。 若手ながらデキシーランドジャズ を演奏する数少ないプレイヤー。 テクニック、音色は申し分なく、 将来嘱望される若手プレイヤー。

筒井政明 〔Trumpet〕

確かなテクニックと 迫力ある音色は、 陽気なデキシーランドジャズのステージには欠くことの できない貴重なプレイヤー。

白石幸司 〔Clarinet & Sax.〕

素直で柔らかな音色に人柄が にじみ出る。 確かな歌心と共にテクニックも 聴く人の心に訴える。
異なった楽器をどちらも一流に 演奏できるプレイヤー。

永生元伸 〔Banjo〕

デキシーランドジャズには 欠くことはできないバンジョー。 現在日本NO.1と云われる 彼の力量の程が充分に伺われる。

河合勝幸 〔Tuba〕

ハッピーなデキシーランドジャズならではのツービート奏法をマスターしたチューバ奏者。将来が楽しみなプレイヤー。

楠堂浩己 〔Drums〕

力強いビートを持ったドラマー。日本のデキシー界NO.1のテクニシャン!
笑顔を絶やさない明るいステージマナーは訊く人を楽しませてくれる。



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