5/2 ドリームコンサート イベントレポート

楽器の街「御茶ノ水」のゴールデンウィークを盛り上げる、恒例の下倉楽器ドリームコンサート(SDC)。今年はいつもの「明治大学アカデミックホール」のほかに、新しい会場「お茶ノ水クリスチャンセンター」での教会コンサートが実現。そう、下倉楽器の向かい側に、実はおしゃれな教会があったんです。

ゴールデンウィークの3日間をついやして行われるSDC。今年はそれぞれの日にテーマが決まっています。初日の今日(2015年5月2日)のテーマは「クラリネット」。響きのゆたかなチャペルで、クラリネット奏者20名による大合奏、ソロ、そしてJAZZのなかでのクラリネット…と、ひとつの楽器のさまざまな貌(かお)を楽しめる素敵なプログラムです。

エレベーターをあがって8階のチャペルにつくと、ちょうどリハーサル中。クラリネット奏者の亀井良信さんが、伴奏ピアニストの仲地朋子さんと音あわせの真っ最中。


亀井良信さんは、端正な音色でこの楽器特有の幅広いダイナミックスを極限までつかいこなす達人。フランスで研鑽を積み高い評価を得て、あのピエール・ブーレーズにも認められた俊英です。ヨーロッパ発祥の騎馬スペクタクル「ジンガロ」に、日本人として初めてソリストに抜擢された、という珍しい経歴もある亀井さんのクラリネット(ビュッフェ)が、チャペルに響きます。ただいま、どこに立つのが一番いいか、お試し中。

各ブランドのブースで大盛り上がりのロビー

コンチェルト・ダモーレ 佐川聖二 クラリネットオーケストラ

コンチェルト・ダモーレ 佐川聖二 クラリネットオーケストラ

まずは、佐川聖二さん率いるクラリネット・オーケストラ「コンチェルト・ダモーレ」の演奏。ふだんはもっと大人数で活動されているそうですが、この日はチャペルでの演奏ということで、選抜メンバーで登場。客席後方から続々と、さまざまなクラリネットが・・・

ずらり勢ぞろいした「コンチェルト・ダモーレ」の面々。まずはイギリスの大作曲家ゴードン・ジェイコブ《序奏とロンド》。

仕掛け人の佐川さん、「みんなもぜひ参加してね!」とステージ上から積極的にメンバー募集。クラリネットだけの大合奏は吹奏楽とはぜんぜん違う迫力があるから、もし興味あれば見学だけでもいい経験になるはず!

指揮者の佐川さんも《アルビノーニのアダージョ》(編曲:石毛里佳)で大熱演。最初は痛切な感じで、後半はラテン風味たっぷりのアレンジがかっこいい!ほかに《ぞうさん》や《七つの子(カラス)》など、「動物」をモチーフにした昭和な童謡がぎっしりつまった《ファンタスティック・ズー(動物歌謡メドレー)》(作曲:坂井貴祐)、そして圧巻は《サウンド・オブ・ミュージック》(編曲:福田洋介・中村匡寿)。どれもクラリネットという楽器の特性を生かしたアレンジが素晴らしい!吹奏楽でもオーケストラでも味わえないクラリネット合奏の楽しさを新発見。

曲目

●アルビノーニのアダージョ(R.ジャゾット/石毛里佳編) ●Clarinet Solo 佐川聖二 ●サウンド・オブ・ミュージック・セレクション(R.ロジャース/福田洋介.中村匡寿編) ・・・他


佐川聖二 クラリネット

プロフィール

佐川 聖二(Seiji SAGAWA)

秋田県秋田市生まれ。名門、山王中学校吹奏楽部でクラリネットに出会う。秋田高校を経て東京芸術大学器楽科へ入学。1975年に卒業後同大学院に進み、在学中の1976年に東京交響楽団に入団、1977年大学院修了。 1980年には文化庁海外研修員としてウィーンに1年間留学。北爪利世、千葉国夫、三島勝輔、A.プリンツの各氏に師事。

2001年6月、25年間首席クラリネット奏者を務めた東京交響楽団を円満退団し、現在は尚美学園大学講師、秋田大学非常勤講師を務めるほか、フリーランスの室内楽・ソロ奏者として活躍中。1995年に東京交響楽団の首席奏者らと結成した「佐川聖二クラリネット五重奏団」での演奏会やCDアルバムの録音など、精力的に活動を行っている。

指揮者としても幅広く活動し、各地でアマチュア団体の指導にも熱心に取り組んでいる。近年ではその情熱的で表現力豊かな音楽づくりが高く評価され、各地の団体から客演指揮やバンドトレーニングの依頼も多く、全国各地を飛び回る多忙な毎日を送っている。弊団音楽監督・指揮者。

使用楽器:YAMAHA YCL-853IIV


コンチェルトダモーレ

コンチェルト・ダモーレ

クラリネット奏者佐川聖二氏の提唱により、同氏を音楽監督・指揮者として2003年10月に設立されたアマチュア・クラリネット・オーケストラです。コンチェルト・ダモーレとは、イタリア語で「愛の合奏団」の意味。佐川氏の好きな言葉「愛」にちなんで名付けられました。 第1回定期演奏会を2003年5月に浜離宮朝日ホールにて開催、ソプラニーノからコントラバスまで6種類のクラリネットを用いて、バロックから現代まで幅広い年代の作品を取上げる一方、小編成アンサンブルにも力を入れています。


亀井良信 クラリネットソロ

クラリネットソロ 亀井良信

そして、亀井さんさっそうと登場。まずは《クラリネット・オン・ザ・タウン》(ラルフ・ハーマン)で軽く試運転。だけどそのめくるめく指さばきや縦横無尽に変化する音色・音量に会場は度肝をぬかれまくり。

名曲《テーマとヴァリエーション》(ジャン・フランセ)の前に、A管(左)とB♭管(右・通常の吹奏楽でもっともよく使われるもの)をていねいに説明してくれる亀井さん。フランスの民謡《月の光にau clair de la lune》をモチーフにした《月の光変奏曲》(ポール・ジャンジャン)で、全員を圧倒。

クラリネットってここまで音が小さくなるのか…え?ここまで大きく鳴るのか?!ええ?ここまで早く指が動くのか(回るのか)…全員、口をあんぐり。だけどもちろん曲芸をみせているわけじゃなくて、それらすべての超絶技巧が「音楽」を感じさせてくれるから、感動するのです。


曲目

●クラリネット・オン・ザ・タウン(R.ハーマン) ●「月の光」変奏曲(ジャンジャン) ・・・他

亀井良信 クラリネット

プロフィール

亀井 良信(Yoshinobu KAMEI)

9歳のときに父のてほどきで、クラリネットを始める。桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)卒業後、渡仏。

パリ市12区立ポール・デュカ音楽院、オーベルヴィリエ・ラ・クールヌーヴ地方国立音楽院をいずれも満場一致の1位で卒業する。

ピエール・ブーレーズに認められ、フランスの騎馬オペラ団"ジンガロ劇団"のスペクタクル"TRIPTIK"でソリストとして出演。2003年帰国。

各地のホールに招かれリサイタルや室内楽演奏会を行っている。 NHK-FM「FMシンフォニーコンサート」「ベストオブクラッシック」「きらクラ」
NHK-BS「クラッシック倶楽部」「題名のない音楽会」に出演。2012年リリースのフランス人作曲家集CD「Rhapsodie」は「レコード芸術」特選盤に選ばれる。

第16回出光音楽賞、2005年度「アリオン賞」、2009年度名古屋音楽ペンクラブ賞を受賞。

桐朋学園大学特任講師・東京音楽大学講師・洗足学園音楽大学非常勤講師。

使用楽器:BUFFET CRAMPON <TOSCA>

仲地朋子 ピアノ

仲地 朋子(Tomoko NAKACHI)

国立音楽大学及び同大学大学院修了
1997年スイスにてR.ブッフビンダー氏に師事。
2001年津田ホールにてリサイタル開催。
NHK-FMに出演他、第24回日本木管コンクール、2013・2014年クラリネット・コスモス、2014年ジャック・ランスロ国際クラリネットコンクールJapanでの公式伴奏を務める。

ピアノ・室内楽・伴奏法を故E.エリアス、N.ユジャニン、K.シルデ、篠井寧子、新城京子、今井顕、徳永二男の各氏に師事。


薗田憲一とデキシーキングス

薗田憲一とデキシーキングス

さて、ラストは日本が世界に誇るディキシーランドジャズのヴェテラングループ「薗田憲一とディキシーキングス」。なんで「クラリネット祭」なのにディキシーが?!と疑問に思われるかも知れないけど・・・

実はクラリネットは、かつてJAZZの花形楽器でもあったのです。今はサックスがメインな感じだけど…で、JAZZの一番最初のスタイルを今に伝える「ディキシー」では、クラリネットは不可欠な楽器なんです。キングスのクラリネットは、白石幸司さん。JAZZのクラリネット吹きってエイジとかコウジとか、ともかく「ジ」のつく人がなぜか多いんだけど、白石さんもその一人です。

サッチモ(ルイ・アームストロング)がテーマにしていた《南部の夕暮れ》をバンドのテーマにしているキングス。さっそく聴かせてくれたのが《ハイソサエティ》。もともとは映画音楽だったけど、スタイルとしてはマーチ。

いわゆるトリオ部分で、ピッコロが吹くきらびやかな装飾フレーズをクラリネットが超絶技巧で演奏するのが、ディキシーの世界では「定番」になっているのです。もちろん白石さんの十八番(おはこ)です。


小さなパラソルを振り回すのは、JAZZのふるさとニューオリンズの慣わし。それを知っているこちらのファンは筋金入りですが・・・

ディキシー初体験の高校生も大興奮。ディキシーは古いスタイル・・・と、いっぱしの「通」気取りのJAZZファンからは軽視されがちだけど、若い人たちにはちゃんと通じているんですね、その楽しさが。


リーダーの二代目「薗田」勉慶(べんけい。本名です)も素晴らしい。初代「薗田」憲一さんは勉慶さんの実父。平成日本に昭和の日本ディキシーの素晴らしさを伝えた先代を乗り越えるべく、苦難の道を歩み始めた俊英は、着実に巨匠の風格が。

《馬小屋のブルース》では、全員が動物の鳴きまねをすることになっています。
会場が一番受けたのが、トランペット』奏者・筒井政明さんの馬のいななき。競馬のファンファーレつき、というのが昭和な感じ(笑)


柔らかなクラリネットサウンドと人柄がにじみ出た歌心あふれた旋律で、ディキシー初体験の方たちを楽しませてくれました。

ディキシーサウンドに欠かせない4本弦のバンジョー!
この日初めて体験したバンジョーサウンドに心を躍らせた方も多くいたのではないでしょうか?


名曲《タイガーラグ》では、チューバ奏者・河合勝幸さんが大活躍。
トラの鳴き声ばかりではなく、決まり文句の「Hold The Tiger!」というシャウトも、会場に飛びだして見事に決めた!

ダイナミックなドラミングで開場を沸かす楠堂さん。
ストレートな2ビートから難解なリズムまで、終始笑顔で開場を楽しませてくれました。


曲目

●リパブリック讃歌 ●マイブルーヘブン(私の青空) ●聖者の行進 ・・・他


薗田憲一とデキシーキングス

プロフィール

薗田(そのだ)勉慶(べんけい)(リーダー・トロンボーン・オカリナ)

東京都大田区出身。2004年 デキシーキングスの一員として病気と闘いながらステージに立つ父を助け、親子共演スタートする。
2006年7月、父 薗田憲一亡き後、正式にデキシーキングス入団。若手ながらデキシーランドジャズを演奏する数少ないプレイヤー。テクニック、音色は申し分なく、将来嘱望される若手プレイヤー。

筒井(つつい) 政明(まさあき) (トランペット)   

福岡県飯塚市出身。1978年ジャズの専門誌月刊『スイング ジャーナル』の新人賞を受賞。確かなテクニックと迫力ある音色は、陽気なデキシーランドジャズのステージには欠くことのできない貴重なプレイヤー。

白石(しらいし) 幸司(こうじ) (クラリネット・ソプラノサックス)  

愛媛県松山市出身。素直で柔らかな音色に人柄がにじみ出る。確かな歌心と共にテクニックも抜群。聴く人の心に訴える。異なった楽器をどちらも一流に演奏できるプレイヤー。

永生(ながお) 元伸(もとのぶ) (バンジョー)  

青森県平川市出身。デキシーランドジャズには欠くことはできない4本弦のこの楽器は音の取り方が非常に難しい。しかしそれを難なくこなしてしまうあたりは、現在日本NO.1と云われる彼の力量の程が充分に伺われる。

河合(かわえ) 勝幸(かつゆき) (チューバ)   

岐阜県大垣市出身。ハッピーなデキシーランドジャズには欠くことのできないツービート奏法をマスターしたチューバ奏者で、将来が大いに楽しめるプレイヤー。

楠堂(なんどう) 浩己(こうき) (ドラム・ウォッシュボード)   

大阪府大阪市出身。力強いビートを持ったダイナミックなドラマー。現在日本のデキシー界NO.1のテクニシャン!笑顔を絶やさない明るいステージマナーは聴く人を楽しませてくれる。又、ウォッシュボードに持ち替えてのパフォーマンスはハッピーなデキシーキングスの雰囲気を大いに盛り上げる。


ドリームコンサート2015 番外編!



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